青い毒リンゴ

緑のひと(arashi/NEWS)と、青いひと(eight/JUMP)。

狂気、それは美しくも儚い

2016/07/01


舞台「マクベス」を観に行った。

主演が大好きなまるちゃんだからというのはもちろんだが、なんといっても演じるのがあのシェイクスピア四大悲劇の中でも主人公が特にヤバい(いろんな意味で)マクベスなんだからこれは観ないわけにはいかない、と英文学科出身ゆえの過剰反応を起こし今回の舞台に対しては並々ならぬ思いがあった。


観終わってすでに5時間は経っているのに未だ放心状態で何を書けばいいのかよくわからないので、思ったことをとりあえず書き留めておく。


まず本作品は狂気が一貫したテーマとなっているが、まるちゃんはそれと真剣に向き合い、自らの中に取り込むことで、マクベスが狂気に苛まれ堕ちてゆくさまを目で、言葉で、体全体で大胆かつ繊細に演じ「狂気と戦っているけれども狂気に満ちている」という一見矛盾した姿を見事に完成させていた。舞台だと身体での表現は伝わりやすいが、表情の変化を如実に表すのはなかなか難しい。にも関わらず、まるちゃんの目はダンカン、バンクォーとその手を血で染めていくにつれ徐々に光り方が変わってくるのだ。終盤には簡単に言うと誰もが「こいつヤバい奴だな…?」と思わざるを得ない顔つきで戦いに臨むのだから鳥肌が立つ。


そんなシーンとのコントラストで際立つのが、マクベスがまだ自意識を保っているときのナチュラルな笑顔。ここにまるちゃんらしさが存分に出ていてなんともかわいらしい。バンクォーと大声で笑いあう場面、マクベス夫人に魔物からの予言を初めて伝える場面など随所に現れるあの顔は狂気の表情と対を成し効果的な役割を果たしていると思う。


初日レポでファンをざわつかせたマクベス夫人だが、彼女とマクベスとの場面はどれもすごくいい。マクベス夫人は、マクベスに予言の実現のため王の殺害をすすめ、物語全体を通して欲望を満たすことへの恐怖を払拭しようと時には優しく時には厳しく懸命にマクベスを励ます。原作では大きな野望を抱く大胆な女性という印象が強いが、この舞台では愛情深い妻がマクベスを愛するがゆえに彼のためと思ったことが狂気への糸口となってしまうという方向で描いているようだ。実際、マクベスと夫人が互いを深く愛しているのだと印象づける場面やしぐさが多く、どれも原作では行間から読み取って想像するくらいしかできないのだが舞台上ではまったく違和感がなく、女性目線だとこんな場面もリアルに描いてしまうのかと驚いた。

そのひとつが例の()キスシーンだ。レポをがっつり読んでしまっていた私はこの目で見たら間違いなくダメージを食らうに違いない、と決死の覚悟で身構えていたのだが、目にしてまず思ったのが
めちゃめちゃかわいいぞ…!?

キスシーンでかわいいなんて何言ってんだと思われるかもしれないが、これから夫婦共々狂気に悩まされるという前提を抜きにしてもラブラブすぎてかわいいのだ。新婚カップルかよ!?ってくらいいちゃいちゃ、というかむしろじゃれあうその様子は子犬を見ているかのようだった(※開き直りではない)


特に見てほしいのは、キスの後のマクベスだ。マクベスはキスが一通り(?)終わったのでその「続き」をしたくてたまらないのだが、夫人はおかまいなしに王の殺害計画をマクベスに言い聞かせ、マクベスがその素振りを見せても夫人は華麗に彼の手を払いのける。
このときのマクベスの物足りなさそうで寂しげな表情。たまんない。


どんなに栄誉に恵まれたマクベスも夫人の前ではただの男(失礼)なんだなあ、とマクベスがより一層愛おしく感じられる場面。


このようなシーンと、狂気や幻覚に悩まされるマクベスを夫人が必死に奮い立たせる様子などを見ていると、この2人に関しては「男と女」としての対比が強調して描かれているように思えた。いつの時代も女は強いというのは本当なのかもしれない。


キス繋がりで書くことではないのだが、殺陣の場面はかなり見ごたえがあった。素早い立ち回りや敵と競り合う姿はどことなく8UPPERSのガムの闘争シーンを想起させる(単に自分がガムを好きすぎるからかもしれない)
最後にかつて味方だった城の者たちと戦う場面は、ぜひ最初の戦闘シーンと比較しながら見てほしいのだが、「俺は女から生まれたやつは恐れない」と魔物からの言葉を吐きながら一人ひとり刺してゆく様子は言葉にならない恐怖を覚えた。
殺しながら相手の首筋に口づけする姿は狂気の果てといってもいいだろう。(好きだけど)


そして、中世が舞台なだけあってやっぱり衣装がどれもかっこいいしよく似合う。スタイルがめちゃめちゃいいから何を着ても似合わないわけがないのだ。王様の正装、戦いの時の戦闘着、城内での白シャツ黒パンツ(パンフの中に載っていた衣装)といろいろあるが、やはり断トツで素晴らしいのは黒ガウン。上半身裸の上からそのまま羽織っているのでしっかりと見えるわけです。

割れた腹筋が。

さんざんワンパックでいじられていたまるちゃんが腹筋割れてるなんてそんな、とか正直思ってたけどスライディング土下座で全力で謝罪したい。とても良い腹筋でした。短期間であそこまで鍛え上げたのはほんとにすごい。個人的に程よく筋肉ついてる感じがツボ過ぎてたまらない。
しかもその姿で舞台上を動き回るものだから結構ひらっとめくれたりするのである。不意にちらっと見える左t…いや、もう言わない…
とにかく永遠に拝んでいたい神衣装だった。世界の絶景100選に入れたい。あともうひとつ、場面は短かったが黒トレンチもものすごく似合っていた。トレンチは本当にスタイルが良くてかっこいい人じゃないと着こなせないし様にならないと個人的には思っているのだが、あの姿はここ最近の雑誌祭りの本気出しすぎてて頭抱えるグラビアを超えるレベルでかっこいい(もちろん雑誌のグラビアも全部好きだよ!!!)


また演出の話に戻ってしまうのだが、魔物の使い方がとても独特だ。原作では3人の〝魔女〟がマクベスに予言を授ける時にだけ出てくる一方で、この舞台では冒頭の戦闘シーンで殺された3人の兵士がそのまま〝魔物〟となり、時には暗殺者、時には門番として何役も兼ね、しかもほぼ物語全体を通して舞台上のどこかに潜んでいるのだ。魔物は単にマクベスを破滅に導くものなのではなく、マクベス自身の弱い部分や欲望、狂気そのものを映し出すものだということを視覚的に提示することで、「道化」や「影法師」のモチーフを印象付ける役割を果たしておりかなり重要な構成要素となっているのではないかと思った。


端的に言うと、これから観る人はまるちゃんだけを目当てに行くみたいな発想はあまり持たないでもらいたい。人間劇なので普通に観ても理解できないこともないし、原作難しそうだから読まなくていいや、という人は実際多いかもしれない。ただ、何しろシェイクスピアなので言葉が難しいのだ。慣れない人には言い回しがよくわからないと感じる人も多いだろう。話の流れをつかんでおくのと、シェイクスピアの言葉を脳が受け入れるように準備すること、2つの意味で原作はぜひ読んでほしい。どうしても無理!って人はあらすじと名ゼリフをググってみるだけでもいい。舞台を観ていて「あ、このセリフ聞いたことある!」とか「今からあのシーンかな?」とかある程度わかった方が断然楽しめるのだ。アドリブだって聞き逃さないし、マクベスに感情移入しやすい。

(あと、BGMがほぼ生演奏なので臨場感がありかなり贅沢なのだが音量的にセリフが聞こえなかった時に多少予想がつくというのもある)


汗を滴らせながら人間が持つあらゆる種類の感情を爆発させ、それでいて指先まで神経を通わせて丁寧に描き出されたマクベス像は、文字通り瞬きを忘れるほど目を奪われる。狂気と人間性の狭間を彷徨い、己と戦うその姿は雄々しく、美しく、本当にかっこいい。こんな言い方だと語弊があるかもしれないが、まるちゃんが内に秘めているものとマクベスの狂気にはどこか重なるものがあるのかもしれない。役者・丸山隆平の実力は底なしだと改めて思った。常日頃思うけれどポテンシャル高すぎて時代が追いつかない。少なくともこの舞台は彼にとって大きな意義のある作品になっただろうし、すごくいい出会いだったと思う。今後もこういうお仕事を通じて今までに見たことのないような一面をもっともっと見せてほしい。



私が見た2時間半の異世界。


そこにいたのはまさに「マルべス」、彼にしか演じられないマクベスだった。